Sho Yamazaki

在庫・仕入

ボトルワインの適切な在庫数と管理

ワインバーの在庫は、席数だけでは決まりません。銘柄ごとの販売・開栓ペース、納品日数、保管場所と仕入予算から補充の目安を決め、入出庫・棚卸し・売れ残りの見直しを続ける方法を紹介します。

ボトルワインの適切な在庫数と管理

選べるワインを増やしたいけれど、セラーには動かないボトルが残っている。よく出る銘柄だけが先になくなり、急な発注も増える。小さなワインバーでは、総本数を増減するだけではこの偏りを直せません。適切な在庫数は、銘柄ごとの動き、補充にかかる時間、品質を保てる場所、仕入れに使えるお金を合わせて決めます。この記事では、未開栓ボトルを基本の単位に、補充の計算例と、少人数で続けられる管理手順を整理します。

「何本あればよいか」は、在庫の役割を分けて考える

席数が同じでも、ボトル中心のお店とグラス中心のお店では、銘柄ごとの減り方が違います。仕入れ先がすぐ納品できるか、限定品で補充できないかによっても、持つべき数量は変わります。一律の総本数を目標にする前に、ワインを次のように分けましょう。

在庫の役割と、決めておくこと
役割管理の考え方
継続して補充する定番販売・開栓ペースと納品日数から、補充目標を決める。欠品時の代替も用意する。
季節・限定・試験導入追加発注の前に、提供する場面と見直す日を決める。定番と同じ数量を自動で買わない。
熟成・特別な提案用保管目的、使う時期の考え方、金額と場所の上限を別に決める。

中小機構のJ-Net21は、在庫が資金を固定し、維持の費用も生むことを説明しています。品ぞろえとして必要な在庫でも、保管できる本数と仕入れられる金額には上限を設けます。熟成目的で持つワインは、その目的を明記し、単に動かない在庫と区別してください。

最初にそろえる情報は、銘柄・動いた本数・納品日数

  1. 銘柄を見分けられる名前にする

    商品名だけでなく、生産者・ヴィンテージ・容量が違うものは別に記録します。短い銘柄コードを付けると、同じ名前を何度も入力せずに済みます。棚番号も付け、セラー・冷蔵庫・予備在庫を同じ表で確認できるようにします。

  2. 未開栓から減った通常の提供本数を確認する

    ボトル販売に加え、グラス提供のために開けた本数も確認します。開栓した時点で未開栓在庫から1本を減らし、その後のグラス販売で同じ1本を再び減らさないようにします。試飲・破損・返品などは理由を分けて残します。

  3. 発注から使える状態になるまでの日数を確認する

    注文の締切、仕入れ先の休業日、配送日、検品に必要な時間を含めます。「翌日配送」でも、締切後に頼めば翌日に使えるとは限りません。最小発注単位・混載の可否・送料条件も確認します。

  4. 販売記録が少ない銘柄は、仮の計画から始める

    新規導入品は実績がないため、提案する場面と初回数量、次の見直し日を決めます。ほかの銘柄の販売本数を、そのまま新商品の需要と扱わないでください。

平均を見る期間は、普段の営業を含む期間を選び、曜日やイベントによる偏りも確認します。欠品した日は売れるはずだった数量が記録に出ないため、販売できた本数だけで需要が少ないと判断しないことも大切です。

週に一度の発注なら、次の確認と納品までを見込む

以下は、継続して補充できる定番ワインを、決まった間隔で確認するための簡易な方法です。需要を保証する計算ではなく、実績と欠品・余りを見て修正する出発点として使います。

補充目標の目安

1日あたりの通常の提供本数 ×(在庫を確認する間隔+納品までの日数)+予備本数

1日あたりの本数は、期間中のボトル販売とグラス用開栓の合計を、その期間の暦日数で割ります。この式では確認間隔と納品日数も暦日でそろえ、営業日と混ぜません。端数が出た目標は、ボトル単位に切り上げます。

次の確認まで待ってから発注すると、届くのはさらに後になります。そのため、週に一度の確認では、納品日数だけを見込むと足りない場合があります。毎日発注点を監視する方式と、この定期確認の方式を混ぜず、自店で続けられる一方を決めましょう。

予備本数は、需要の振れ、納品の遅れ、代替できる銘柄の有無から調整します。すべての銘柄に同じ本数を足す必要はありません。週末に注文が集中するなど平均だけでは足りない場合は、該当する日の見込みを別に確認します。

実際に発注する本数

補充目標 −(使える未開栓の実在庫+確認済みの入荷予定−通常の見込みに含めていない取り置き)

結果が0以下なら、このルールでは追加発注は不要です。未着の注文は、数量と到着予定を確認でき、必要な時期までに届く分だけを数えます。到着が遅い注文で、目の前の欠品を補えるとは考えません。すでに取り置き分を除いた在庫数を使うなら、取り置きをもう一度引かないでください。

発注後に入る数量が棚に収まるか、次の納品までに今の在庫が尽きないかも確認します。ケース単位に切り上げて大量に余る場合は、混載・少量発注・確認間隔の短縮・代替銘柄を仕入れ先と相談します。送料無料だけを理由に、予定より多く買い足さないようにします。

計算例:週7本動く定番ワインを、週1回確認する

ここからの本数・日数はすべて架空の作例です。店舗の実績や、全店共通の推奨数量ではありません。

定番ワインAの発注を考える作例
確認する項目例の条件
通常の提供本数暦の1週間に7本(ボトル販売+グラス用開栓)。1日あたり平均1本。
確認間隔7日ごと
納品までの日数発注から3日
予備本数この例では2本と仮置き
補充目標1本 ×(7日+3日)+2本 = 12本
使える未開栓の実在庫6本
確認済みの入荷予定2本。今回の新規発注とは別に、すでに注文済み。
取り置きこの例では0本
今回の発注本数12本 −(6本+2本)= 4本

通常の見込みに含めていない特別な取り置きが2本あれば、今回の発注は6本になります。取り置き分も含めた実際の入荷後の本数が、保管場所に収まるか確認してください。

この例の「12本」をほかの銘柄にも当てはめるのではなく、その銘柄の動きに置き換えます。限定品や、月にほとんど動かない銘柄は、同じ式で自動補充せず、提供の目的と見直し日から判断します。

記録は、未開栓の本数と開栓後の残量を分ける

在庫表は紙でも、使い慣れた表計算でも構いません。J-Net21の在庫管理の説明を、小さなお店向けに応用すると、置き場所を固定し、何がいつ動いたかを同じ記録へ残すところから始められます。

銘柄ごとの基本表には、銘柄コード、商品名・年号・容量、棚番号、仕入単価、補充目標、発注単位を残します。日々の動きは、入庫、ボトル販売、グラス用開栓、試飲・破損などの理由別に記録します。発注中の数量と到着予定、取り置き分は別欄で確認してください。

未開栓の残りを求める式

前回の未開栓残 + 入庫 − ボトル販売 − グラス用開栓 − その他の出庫

銘柄A01・ある営業日の架空の記録
確認する項目本数
開始時の未開栓残6本
入庫4本
ボトル販売2本
グラス用開栓1本
試飲用の開栓1本
終了時の未開栓残6本

計算は6+4−2−1−1=6本です。グラス用に開けた1本は、以後「開栓済み」の記録に移します。開栓日・保管方法・残量を記録し、残量はmLなど自店で統一した単位にします。未開栓1本と、少量残った開栓済み1本を、同じ1本として発注に使わないでください。

入庫時に納品書と本数・銘柄・ヴィンテージ・状態を確認し、販売や開栓の時に動きを記録します。後でまとめて書く場合も、伝票など確認できる根拠を残し、記憶だけで数を合わせないようにします。

棚卸しは、同じ時点で実物と記録を照合する

J-Net21では、棚卸しを実在庫の確認と、在庫管理の有効性を確かめる手段として説明しています。表の残りだけを見て発注せず、実物との照合を定期的に行います。

  1. 数える時間と範囲を決める

    閉店後など、入庫・販売が止まる時間に数えます。営業中なら、数えている間に動いた分を別に残します。セラーだけでなく、冷蔵庫・予備棚も対象にします。

  2. 棚の順に、実際の本数を記入する

    コード・棚番号の順で数え、未開栓と開栓済みを別に確認します。二重に数えた棚や、数え忘れた箱がないよう、確認済みの場所に印を付けます。

  3. 差があれば、理由と修正を残す

    未記録の開栓、試飲、破損、入庫日のずれ、違う年号への記録を確認します。実在庫へ修正する時も、数値だけ上書きせず、日付・差の本数・理由を残します。

日常はよく動く定番と高額品を優先し、全銘柄は決めた日に確認する運用にすると、作業を分散できます。発注の確認は週1回、全体照合は月1回など、自店の営業量に合わせて予定を決め、差が続く銘柄は確認を増やしてください。これは運用を始めるための例で、会計上必要な棚卸しの日程は別に確認します。

品質を保てる場所と、仕入金額の上限を確認する

本数が適切でも、保管環境が合わなければ品質を保てません。WSETは、長期保管では10〜15℃の安定した温度と、強い光を避けることを示しています。これは長期保管の目安で、提供する時の温度とは分けて考えます。厨房の熱や直射日光、日々の大きな温度変化がある場所は避け、ワインと保管機器の案内に従ってください。WSETの保管・提供温度の解説

未開栓でコルク栓のボトルは、横向きでの保管がWSETの基本案内です。スクリューキャップなどは栓の仕様も確認します。一方、開栓済みは閉栓し、立てて低温で保管するなど、未開栓とは別に扱います。開栓後に提供できる期間は一律に決めず、ワイン・保管方法・状態に応じて確認してください。WSETの開栓後の保存方法

発注前は「使える保管場所に収まるか」と「今回の仕入金額を支払えるか」を一緒に確認します。管理用の在庫金額は、本数×自店の仕入単価を銘柄ごとに足して把握できます。単価の税込・税抜を混ぜず、販売価格の合計を仕入金額と扱わないでください。会計の評価方法とは区別した、仕入判断のための目安です。

動かないワインは、追加発注より先に提供の計画を見直す

銘柄ごとに最終入庫日・最後に提供した日・保管目的を見て、予定より動いていないものを確認します。熟成のために保有するワインと、販売を見込んだまま動かないワインを同じ扱いにしないことが大切です。

  • 定番として必要か、似た役割の銘柄を重ねすぎていないかを確認する。
  • ワインリストに、味わい・価格・料理との組合せが伝わる説明を付ける。
  • グラス提供へ変える場合は、提供できる期間内の杯数を見込んでから開ける。
  • 次の見直し日と担当を決め、追加仕入れを続けるか判断する。

「売れないから開ける」を繰り返すと、開栓済み在庫やロスが増える場合があります。状態と提供の見込みを確認してから判断し、品質に問題があるものを販売して数を減らそうとしないでください。

お客様の好みを、仕入れの判断材料のひとつにする

販売・開栓の記録に加えて、「軽い赤の希望があった」「食後に少量で飲める選択肢を聞かれた」など、接客で分かった要望を残すと、次の品ぞろえを考える材料になります。お客様が話した希望と、店舗側の推測は分けて記録します。好みの回答だけで将来の購入本数が確定するわけではありません。

TSUGIVOは、アンケート回答と店舗メモ、来店後の接点を整理する選択肢です。回答やメモを接客・品ぞろえの検討に使う場合も、利用目的と必要な範囲を確かめてください。TSUGIVOは在庫数の計算や自動発注を行うツールではありません。在庫表は別に管理し、顧客情報の整理が課題になった時に導入ページで役割と受付状況を確認できます。

次の発注前に確認するチェックリスト

  • 銘柄・ヴィンテージ・容量を区別し、置き場所を決めた
  • ボトル販売とグラス用開栓を、二重に減らしていない
  • 確認間隔と納品までの日数を、同じ暦日で計算した
  • 補充目標は銘柄ごとの動きから決めた
  • 入荷予定の数量と到着予定を確認し、重複発注を防いだ
  • 取り置き分を二重に差し引いていない
  • 未開栓と開栓済みを分け、実物と記録を照合した
  • 今回の発注が保管場所と仕入予算に収まる
  • 動かないワインの目的と、次の見直し日を決めた

次にできること

ひとつ、営業に取り入れてみる。

まずは全体の本数と仕入金額を確認し、よく動く定番ワインから補充目標を設定してください。次の発注日に実在庫・入荷予定・取り置きを照合し、欠品と余りを見て目標を修正します。営業中に気づいた要望や確認漏れは、日報にも一言残して翌日の作業につなげられます。

出典・確認した情報

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